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サルコジ・フランス大統領就任演説全文

2007/05/19 09:20

 

フランス語を読めないわたしが、フランス共和国大統領になったニコラ・サルコジ氏の就任演説の全文を当欄に掲載できた経緯を、まずお伝えしなければならない。これが、じつに単純なのである。在日フランス大使館広報部は、日ごろから、わたしのオフィスのパソコンにインフォメーションを流してくれている。もちろん、日本語で。

 

当選したサルコジ氏がジャック・シラク大統領から権限移譲を受ける式典が2007年5月16日、パリのエリゼ宮(大統領府)で行われた。たしか、その翌日には、新大統領の就任演説の日本語訳が届いていたと思う。しかし、わたしはほかのことで忙しく、せっかくの就任演説を放っておいた。

 

昨日、オフィスでこのインフォメーションを思い出して開いてみた。そして考えた。フランス大統領の就任演説全文を目にする機会など、ほとんどない日本国民にこれを紹介するのは、決してムダではないと。

 

その前に、「第5共和制」というフランス独自の制度について、フランス外務省発行の国際広報誌「label France」第66号の記述を紹介しておきたい。

 

「第5共和制――ドゴール将軍の推進により1958年に生まれた第5共和制は、近代民主主義を実現するケースとして、議院制と大統領制の両方を備えたすぐれたモデルであるといえよう。フランスの政治体制は、よく準大統領制と喩えられる。

第3、第4共和制は大統領の力が弱く(王制とナポレオン王朝時代からの≪個人的権力)≫をきらう反動により)、政府は不安定で議会の権力が強かった。しかし1958年の憲法により、共和国大統領はこれまでにない権限と役割を与えられた。
1962年から大統領は国民の直接選挙により選ばれることとなった。大統領は、国家を代表するとともに、政府機関を守り、≪国土と国体を維持≫する。政治を代表し、議会の多数派のなかから首相を指名するとともに、政府の進める政策に大きな指針を与える。大統領は、議会を解散することができるが、議会は大統領を罷免することができず、議案をコントロールする政府を監査することができるのみである」

 

それでは、サルコジフランス大統領の就任演説をご覧いただくことにしよう。

 

<皆様。今日、フランス共和国大統領に正式に就任するにあたり、私はこの歴史ある国フランスを思っている。フランスは多くの試練に遭い、常にそれを乗り越え、常に万人のために語りかけた。今後は、私が世界に対して、この国を代表する重務を担う。

 

私は第5共和政の歴代大統領を思っている。

 

私はド・ゴール将軍を思う。共和国を2度救済し、フランスに主権を、国家に尊厳と権威を回復させた。

 

私はジョルジュ・ポンピドゥとヴァレリー・ジスカール・デスタンを思う。それぞれの流儀で、フランスの迅速な近代化に多大な貢献をなした。

 

私はフランソワ・ミッテランを思う。制度を保持すると同時に、共和国がフランス全国民のものになるために政権交代が必要となった時に、それを体現した。

 

私はジャック・シラクを思う。12年にわたり、平和のために尽力し、フランスの普遍的価値を世界に広めた。私は環境破壊の切迫性と、未来世代に対する各自の責任を万人に認識させるべく、同氏が果たした役割のことを思う。

 

とはいえ、極めて厳かな今この時にあたり、私の思いは何よりもまず、フランス国民に向かっている。フランス国民は偉大な人民であり、大いなる歴史を誇り、民主主義の信念を訴えるため、これ以上隠忍するのは望まないと訴えるために立ち上がった。私は常に試練を勇敢に乗り越え、世界を変える力を発揮したフランス国民を思っている。

 

私は先の選挙戦で強く寄せされた期待、希望、よりよい未来を信じる必要を、感動とともに受け止めている。

 

私はフランス国民が私に託した任期を厳粛に受け止めている。私にはこの任務に求められる強い要求を裏切る権利はない。

 

フランス人を結集することへの要求がある。フランスは団結している時にのみ、力を発揮する。今日、フランスには直面する試練に立ち向うため、強さが必要とされている。

 

約束を重んじ、守ることへの要求がある。これほど信頼が揺らぎ、薄れたことはかつてなかった。道徳的な要求がある。これほど価値の危機が深刻なことも、指標を見出す必要が強いこともなかった。

 

労働、努力、功績、尊敬の価値を回復することへの要求がある。これらの価値は人間の尊厳ならびに社会進歩の条件の礎である。

 

寛容と開放への要求がある。これほど不寛容やセクト主義が破壊力を持ったことはなかった。善意あるすべての女性とすべての男性が、未来を想像するために、持てる才能、知性、考えを出し合うことが、これほど必要とされたことはない。

 

変化への要求がある。フランスにとって、これほど退嬰主義が有害なことはなかった。この変動する世界では、だれもがだれよりも早く変わろうと努力し、すべての遅れが致命的で、取り返しがつかなくなり得る。

 

安全と保護への要求がある。将来への不安、この主体的に行動したり、危険を冒すことに対する消極的感情を克服することが、これほど必要とされたことはない。

 

秩序と権威への要求がある。我々は混乱と暴力に屈しすぎた。これらは何よりもまず、最も弱い立場にある人々や、最も恵まれない人々に害を与える。

 

結果への要求がある。フランス人は日常生活で何も改善されないことに閉口している。フランス人は生活が常につらく、苦しくなることに閉口している。フランス人は結果が何一つもたらされないのに犠牲を強いられることに閉口している。

 

正義への要求がある。これほど多くのフランス人が、これほど強い不公正感を、犠牲が公正に分配されていない、すべての人々に対して権利が平等ではないという感情を、長期間にわたって抱いたことはない。

 

過去の態度、思考習慣、理知的な順応主義を断つことへの要求がある。解決すべき問題は未曾有のものだからだ。

 

国民は私に大統領の一任期を託した。私は任務を全うする。私はフランス人が私に表明した信頼に恥じないように、誠実に任務を果たす。

 

私はフランスの独立とアイデンティティーを守る。

 

私は国家の権威の尊重と、公正さに留意する。

 

私は実質的な権利と完璧な民主主義に基づいた共和国を築くように努める。

 

私は保護するヨーロッパ、地中海沿岸諸国の結束、アフリカの発展のために闘う。

 

私は人権保護と気候温暖化対策を、世界におけるフランスの外交活動の優先課題とする。

 

任務は困難であり、継続的に取り組まなければならない。

 

ご列席各位は国家における地位を通して、市民各位は社会における地位を通して、任務遂行に貢献する資格を有する。

 

私はフランスへの奉仕に党派はないと確信していると申し上げたい。自国を愛する人々の善意のみがある。全体の利益への情熱にかき立てられた人々の能力、考え、信念のみがある。

 

私は自国の役に立ちたいと望むすべての人々に対して、いつでも共に働く用意があると申し上げる。私は彼らに信念を変えたり、友情に背いたり、歴史を忘れるように求めることはしない。どのようにフランスに奉仕したいかは、自由な人間の精神と意識に基づいて、各自で決めることである。

 

5月6日、ただ一つの勝利しかなかった。それは滅亡を望まず、秩序とともに変化を望み、進歩とともに友愛を望み、有効性とともに公正を望み、アイデンティティーとともに開放を望むフランスの勝利である。

 

5月6日、ただ一人の勝利者しかいなかった。それは、諦めたくない、事なかれ主義と保守主義の殻に閉じこもったままではいたくない、人が代わりに決めたり、考えたりすることをこれ以上望まないフランス国民である。

 

我々の愛と尊敬に値する、この存続を望むフランス、この諦めることを望まない国民に対し、私は失望させないという決意を表明したい。

 

共和国万歳!

フランス万歳!>

 

<きょう・あす・あさっての見頃の草花>

 

5月19日、ウグイスの初鳴き(東白鬚)、ユリノキ開花(武蔵国分寺)。

5月20日、ポプラ・ヤマナラシの柳絮(りゅうじょ。柳の熟した実から綿毛をもらった種子が飛び散るさまをいう)飛ぶ(林試の森・水元)、トチノキ(善福寺川・和田掘・石神井)。

5月21日、エゴノキ・ガマズミ(小山内裏)、サツキ(六義園)。

 

〔フォトタイム〕

 

新丸ビルその6

丸の内というのは、進化する街。人々にときめきをあたえる街、といってよいと思います。



 

カテゴリ: コラむ    フォルダ: 大島信三のひとことメモ

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コメント(2)

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2007/05/19 15:25

Commented by 再太(リフトル) さん

大島様
私はパリの昌子さんのファンなんですが、今朝の【緯度経度】もいつもながら面白かったですね。「自己中」そのもの人間のフランスの歴史のなかで出るべくして出てきたサルコジ大統領。やはり今のフランスを束ねられるのはこの人をおいてほかにはないということでしょうか。
(在仏日本国大使館からメールマガジンを毎月配信してもらっていますが、これもいろいろ参考になります)

 
 

2007/05/19 19:40

Commented by 大島信三 さん

パリの山口支局長とは、以前、同じ部(編集局特集部)で一緒でした。いま、メディアのなかでもっともフランスに詳しいジャーナリストですね。応援して下さい。

 
 
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