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中国「富人と農民工」の天国と地獄の現実(下)

2007/04/03 09:14

 

田原総一朗氏によれば、テレビは液体メディアだという。放映されれば、流れてしまって残らないという意味だ。VTRが発達したとはいえ、どれもこれも録画しているわけではない。すぐれたドキュメンタリーを固体メディアに変換するのは、活字ジャーナリズムに籍を置く人間の務めであろう。

 

そういうわけで、4月1日の夜9時から放映された、NHKスペシャル「激流中国超格差社会の壁」について報告をつづけたい。こんどは、出稼ぎ農民の実態である。「娘を高校に通わせないといけないから」と、杜文海さん(48)は、息子と一緒に内モンゴル自治区から天津市にやってきた。郷里の村には、息子の嫁と孫、それに娘が残っている(妻は病死)。

 

大黒柱の杜さんの年収は、わずか10万円にしかならない。けれど、下をみれば、もっと所得の低い層もある。中国では、いま貧富の格差が、70倍に達しているといわれるが、実際には、どれだけその差がひらいているのか、だれにもわからない、というのがほんとうのところであろう。

 

杜さん父子は、稼いだお金のほとんどを娘の学費と、家を守る家族3人の生活費のために仕送りしている。父親は、なんとしても、この貧しい暮らしから抜け出すために娘を大学へ行かせたいと願っている。大都会の片隅で、「旧正月までに3万円は貯めたいね」と息子はつぶやくが、父親は「このままでは難しいぞ」と肩を落とす。娘の半年分の学費の納入日が迫っているのだ。

 

やっとの思いで大学へ行かせた子どもたちだが、かれらのほとんどは都市に就職してふるさとには帰ってこない。帰りたくとも、職がないのだ。それどころか、いま中国では、都市部でも大卒の就職難が問題化している。大学は出たけれど、という昔、日本でも騒がれた現象が中国でも目立ちはじめたのだ。しかし杜さんには、そんな社会状況を気にする余裕など、どこにもない。目前には、いますぐに解決しなければいけない問題が、あまりにも多いのだ。そのひとつが、家賃。

 

杜さんは家賃が月900円の4畳半に息子と間借り生活をしている。しかし、月900円の家賃も払えず、「もう2か月の滞納だよ。いい加減にしておくれ」と、鬼婆のような家主から責め立てられている。仕方なく、杜さんは、同郷の仲間からお金を借りてきて払った。家主は冷たくいう、「あと8日で、つぎの支払い日だよ」。このままでは、杜さんは娘に学校を続けることもできないのだ。

 

天津港の国家的プロジェクトの工事現場で、杜さんは働いている。木の枝で編んだ土木用の敷き物をかついで運ぶのだ。1枚38円。だいたい3枚から4枚運ぶ人が多いのに、杜さんだけは6枚。「しんどい。すごく重い。しかし、頑張らないと、お金にならない」と杜さんは、顔をしかめていた。

 

旧正月、村へ帰省した杜さんは、息子の嫁に、出稼ぎに来てほしいと頼んだ。それしか、解決の方法がないのだ。幼い子どもを実家に託して天津にむかうバスに乗る杜さんと息子の嫁。テレビを見ているほうも居たたまれない気持ちになった。

 

張建平さん(31)も、妻の艶秋さん(30)と一緒に内モンゴル自治区の杜さんと同じ村から天津へ出稼ぎにきている。午前6時、張さんは、日雇い仕事を得ようと、懸命だが、仕事はなかなかみつからない。地方から出稼ぎにやってくる人たちが多すぎるのだ。中国の出稼ぎ人口は、1億人ともいわれている。日本の生産人口をはるかに超える人たちが、職を求めて都市にやってきている。わたしも5年前、まだ薄暗い早朝、西安で職を求めて集まってきた黒山の人だかりを目撃したことがある。あとで、「集まっていたのは、出稼ぎの人たちですか。たいへんですね」と、現地のガイドに尋ねたら、「西安に出てこられるだけでも幸せですよ」と、いった。いまほどに農民の行動は自由ではなかったのだ。

 

張さんは、もう2週間も仕事にありついていない。ふるさとには、7歳になるひとり息子の欣宇ちゃんがいる。欣宇ちゃんは、4年前、右腕を機械にはさまれて、複雑骨折してしまったが、手術に必要な3万円がまだつくれないのだ。仕事のない夫に、妻は苛立つ。

 

「もっと頑張って、仕事を探してよ」

「いつも探してるだろ。働いてないって、ブツブツいうなよ。探してるけど、人余りなんだよ」

「働いてくれれば、文句はいわないわ」

「また、これだ」と、怒って出ていく夫。

「出稼ぎに来ないと、お金がない。出稼ぎに来れば、ケンカばかり」と、いって泣き出す妻。やりきれない場面である。

 

人口2000人の張さんの村は、農業だけでは、食べるのがやっと。現金収入はほとんどない。村に残された子どもたちは、小学校の寄宿舎で暮らしていた。改革開放で医療費などが高騰し、親たちは現金を得るために、出稼ぎに行かざるを得ないのだ。北京では、出稼ぎの両親と一緒にきた子どもたちが通う無許可校、いわゆる民工学校が問題になっている。とても公立学校へ通わせることなどできないのだ。NHKの今回の番組では、多くの子どもたちが、両親と別れ別れになって地元に残されている現実をクローズアップした。寄宿舎生活をおくる子どもたちの食事は、朝と晩の2回だけ。つけもの以外におかずはない。夜、外の気温はマイナス20度。十分な石炭もないので、子どもたちは肌と肌をふれあって、暖を取りながら寝起きしているのであった。

 

将来、何になりたいか、という作文に、欣宇ちゃんは、「僕の夢は大学を出て、たくさん稼いで、パパとママを苦労させないことです」と書いていた。また、欣宇ちゃんの祖母が、高血圧で目が霞んでしまった。往診した医師が血圧を測ったら220にもなっていた。町の病院で検査したほうがいいとすすめたが、お金がかかるので病院へ行くのを拒んだ。これもまた、切ないシーンであった。

 

<きょう・あす・あさって>

 

4月3日、大安。コブシ見頃(小宮、石神井)、ヤナザクラ開花(小金井)。

4月4日、クマガイソウ開花(殿ヶ谷戸)。

4月5日、ヤマザクラ(小山内裏)、モミジ芽吹く(小石川)、ヒイラギナンテン(宇喜田)。

 

〔フォトタイム〕

 

桜の季節の不忍池その3

ニッポンのサクラは、いまでは世界的に知られています。台湾などからサクラ・ツアーがやってくるほどですね。不忍池にも外国人の姿がありました。また、屋台もたくさん出ていました。サクラは、日本人の心をうきうきとさせてくれますね。



 

カテゴリ: コラむ    フォルダ: 大島信三のひとことメモ

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コメント(10)

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2007/04/03 12:45

Commented by dm1940-66ys さん

NHKは有り余る制作費で、何故中国の光と影のドキュメントを放送するのだろう。13億の兵力を振りかざして、反日だ、大陸棚は全部俺の領土だ。慰安婦だ。その他考えるのも腹の立つことを、居丈高にわめいているでかい国。映像は水のように流れるからと、産経新聞がその流れを止めて、記憶に留める必要がどこにあるのだろう。やなことは早く忘れる方が幸せなこともある。アフリカの現状だって、反日を叫ぶでかい国以上に大変だろうに。インドだって貧富の差は大きいだろうに。日本だって地元の工場が大陸に移っていく現状を、我々はもっと理解しなければならないだろう。横田めぐみさん等、日本国内で平穏に、国を信じて暮らしていたのに、国の怠慢としか考えられない理由で人攫いに攫われてしまい、まだ解決の糸口すら見えていない。周辺国は同情心は表明するが、期待のもてる対応を示してくれない。問題提起はするが、解決策を示せない報道が多すぎる。この問題だって目減りの続く年金生活者に見せ付けてどうしろと言うのだろうか。
おめでたい経済界は、日本の工場を閉鎖して大陸に、中国人の労働機会を増やしに行くのだろうか。NHK受信料の支払い義務化なんて冗談じゃない。金を払って見たくも無い。番組に値段表をつけてほしいくらいだ。
大島さんって熱い人なんだな。

 
 

2007/04/03 17:07

Commented by 大島信三 さん

温家宝首相の来日を目前にして、なぜNHKは中国の暗部にまで踏み込んで放映するのか、という疑問はありました。でも、取材班の熱意は素直に評価したいですね。

 
 

2007/04/03 22:32

Commented by ちゃた さん

こちらは初めて書き込みます。

dm1940-66ys さん

中国人と中共を同一視してませんか?

中国人とは、中共に支配される人の略なんだと思います。
あの国に国民は存在せず、「人民」とは言いえて妙。

同情しろとは言いません。

しかし、中共に対する批判を、中国のそれも農民に向けるのはどうかと思います。アフリカやインドも貧しいでしょうが、自由はあるのではないでしょうか(貧しい故の物理的不自由はしかたないとして)。

現在、彼らが総じて反日であるのも、体制による情報操作、教育による洗脳によるものであり、自由意思で選んだものではなく、そのことを自分で気づいていないのが悲しいところです。

中共と支那人を分離できることは、台湾等に住む華僑が違った側面を見せることで、実証できるかと思います。

 
 

2007/04/04 13:41

Commented by ポコポコ さん

中国を 『 格差社会 』 と呼ぶのは、あまりに的外れではないですか?
日本のマスコミにはしっかり報道してもらいたいと思います。

格差というのは、基本的に平等な社会で、結果として差が生じる場合に使う言葉だと思います。

しかし、中国の場合は 『 戸籍 』 に名を借りて、実質的には差別社会、身分制社会となっています。生まれた時点で差別が固定されてしまいます。
これは「格差」ではなくて、あきらかに「 身分制度社会 」 「 奴隷制社会 」です。
「農民戸籍」とは実質的に「農奴」を意味しています。
かつての南アの、人種隔離政策などと基本的に同じものです。

マスコミは、格差などという表現ではなくて適切な表現を使ってもらいたいものです。

 
 

2007/04/04 13:44

Commented by ポコポコ さん

NHKも、サンケイも、他のマスコミも、中国の貧困を伝えるときは
現実をきちんと伝える表現を使ってもらいたいものです。

 格差社会 ではなくて  農奴社会(奴隷制社会) でしょう?

 
 

2007/04/04 13:54

Commented by 大島信三 さん

なるほど、そういう見方もあるかもしれません。う~ん、でも、農奴社会というのは、どうでしょう。

 
 

2007/04/05 12:36

Commented by ポコポコ さん

To 大島信三さん
>なるほど、そういう見方もあるかもしれません。
>う~ん、でも、農奴社会というのは、どうでしょう。

都市と農村の2種類の戸籍があります。
農村戸籍の人達は、教育、その他・・・ あらゆる面で、あきらかに、ひどい差別待遇を受けています。生まれたときに決まってしまう差別です。
ですから「農奴」と呼ぶにふさわしいのでは?

単なる格差などという表現はあまりに的外れ! 
認識不足といういわれても仕方が無いでしょう。
アメリカなどでは、遥か以前からこれらの問題を人権問題として指摘していました。

農奴ではないというなら、適切な表現を考えてもらいたいものです!
実態にふさわしい表現にしてもらいたいものです!

 
 

2007/04/05 23:14

Commented by 大島信三 さん

たしかに中国の農村戸籍の人々はひどい差別をうけています。中国の王朝交代は、農民の反乱によって生じていますので、いま共産党政権は戦々恐々としているはずです。

NHKは、この番組のタイトルを「超格差社会の壁」としていました。これでいいようにも思いますが、ほかになにか、ぴったりの表現がありましたら、どなたか、教えてください。 

 
 

2007/04/07 23:03

Commented by cax96420 さん

 難しい話は私にはわかりません。でも、いてもたってもいられなくてNHKに電話して、「手術費用を・・・。」と申し出ました。
 
 嬉しいことに、同じ気持ちになった皆様から多数問い合わせがあったようです。この件に対しては受け応えが文章になってオペレーターに渡されていました。

 ありきたりの文章を聞かされましたが、「なんとかしてあげたい。」という気持ちにさせておいてそんな文章聞かされて「ああ、そうですか。」という感情にもなれなくて、その気持ちを素直にぶつけると、製作担当者から明日にでも連絡を頂けるとの事。

 30分後、携帯にNHKの担当者から連絡が入る。何とかしてお金を届けたいと話すと、在日中国人の方々が欣宇ちゃんの手術に必要な30万円を用意している旨を報告を受ける。

 また、嬉しい気持ちになりました。

 「素晴らしい番組だった思う。」

 
 

2007/04/08 00:25

Commented by 大島信三 さん

ほう、そういうことがあったのですか。嬉しい話ですね。

 
 
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2007/04/03 09:27

格差の無い社会?北の楽園のことですか [櫻党EX]

 

4月1日のNHKスペシャル「激流中国 超格差社会の壁」について、大島信三さんの記者ブログのエントリを読まれた方も多いのではないでしょうか(私もコメントさせて頂きました)。 http://oshimas.iza.ne.jp/blog/e…